~from the Mayor's Desk~
町長の机から 第229回(2021年1月号)
五木の子守唄
おどま盆ぎり盆ぎり 盆から先ゃおらんと 盆が早よくりゃ 早よもどる
熊本県球磨郡五木村に伝わる子守唄で、哀調を帯びたメロディは人口に膾炙(かいしゃ)しています(少し古いかもしれませんが)。その五木村は日本三大急流とされる熊本県球磨川の支流、川辺川流域の村です。球磨川流域は、令和2年7月豪雨により死者65名、6千戸超が浸水する甚大な損害を被りました。この地域には球磨川の治水策として、1966年(昭和41年)、国が支流の川辺川にダムを建設する計画を発表していました。建設賛成派と、水質悪化などの環境破壊を懸念する反対派が長年対立してきましたが、水没予定地となる五木村での用地買収はほぼ完了しています。熊本県知事は、2008年9月に計画反対を表明し、翌2009年、当時の民主党政権が中止方針を示しました。しかし今年7月の豪雨で球磨川が氾濫後、知事は方針転換し建設を容認、「命と環境の両方を守ってほしいという願いが、私が感じ取った民意。この民意が決断をした最大の理由だ」と説明しました。半世紀ぶりにダム建設の方へ動き出すことになったのです。
批判を恐れず、自らの過去の判断を覆し、半世紀ぶりに川辺川ダム建設に舵を切った熊本県知事の決断は正しい、と私は思います。頻発化、激甚化する自然災害に対して過去の経験は通用しません。想定外が常態化している近年の自然災害、荒ぶる自然災害に向かい合うとき、謙虚に、思慮深く、叡智を集めて対応していきたいと思います。
現在、川辺町では川辺町地域防災計画の見直しと、川辺町国土強靱化地域計画の作成を急いでいます。防災計画が、発災時・発災後の緊急対応(応急・復旧・復興)についての計画であるのに対し、強靱化計画は発災前に焦点を絞り、災害予防・応急体制整備・迅速な復旧復興体制整備を検討するもので、防災の範囲を超えて、まちづくり政策・産業政策も含めた総合的な対策となります。事後対策の繰り返しを避け、平時から大規模自然災害に対する備えを行うことを目的としています。強く、しなやかな国土、強靭な郷土を作り上げていくことを目指しています。
居安思危 (こあんしき) 安(やす)きに 居(お)りて 危(あやう)きを 思う、
思則有備 (しきそくゆうび) 思えば即ち備え有り、
有備無患 (ゆうびむかん) 備え有れば患い無し。
川辺町長 佐藤光宏