~from the Mayor's Desk~
町長の机から 第251回(2023年1月号)
和太鼓アーティスト 加藤拓三(たくみ)氏
長髪で柔和な目をした若者が町長室へ入って来ました。どこかで見たような記憶があるのですが、思い出せません。若者は、優しい声で「初めまして、私、加藤拓三と申します。」と言いながら、名刺を差し出しました。その名刺には本人の顔写真が写っていましたが、それを見てはっと気が付きました。日本を代表する有名な和太鼓奏者で、過去何度もその演奏を聞いたことがあります。恵那市在住で、国体の開会式の御前演奏、伊勢神宮奉納太鼓など、多くの公式行事のアトラクションで、見事な撥(ばち)さばきを披露しています。演奏中は、真剣そのもの、怖いような気迫が伝わってきます。名刺の顔が演奏中の、あの刺すような眼光であるのに比べ、目の前に立っている青年の雰囲気があまりにも優しかったので、気が付かなかったのです。
加藤拓三、1981年 岐阜県恵那市生まれ
2004年 太鼓芸能集団「鼓童」(新潟県佐渡市)にて2年間研修
2008年 「第7回東京国際和太鼓コンテスト 大太鼓部門」最優秀賞受賞
2012年 「ぎふ清流国体」開会式にて、天皇皇后両陛下の御前演奏
2015年 「第7回太平洋・島サミット」安倍総理夫妻晩餐会・歓迎演奏
2016年 「岐阜県芸術文化奨励賞」受賞
2022年 飛騨・美濃観光大使就任
彼は大学在学中にアメリカへ語学留学、そのとき、2001年9月11日をニューヨークで迎えました。アメリカ同時多発テロ事件を身近に経験し、失われていく命、悲しみに暮れる人びと、破壊された街の姿に言葉を失いました。追悼演奏を続けながら、もっと太鼓を上手く打ちたい、もっと日本の文化を知りたいと思いました。
日本に帰国後、様々な活動を続けてきましたが、もう一度世界で活動したい想いが募るばかり。4月に幸運にもアメリカの永住権・グリーンカードを取得。今後5年間、アメリカでの活動を続ける中で、目の前にいる人びとが少しでも優しい気持ちになれるよう、音色に魂を注ぎ込むと決意表明をしてくれました。岐阜県42市町村を挨拶して回っているとのこと。優しくも力強い彼を応援しています。
川辺町長 佐藤光宏